一、紅の乙女


許さない、許さない・・・・。

この私を愚弄したこと、必ず後悔させてやる・・・!

それまで首を洗って待っていろ、・・・・・・!!




「いやあ、運動の後の紅葉は一段と綺麗だね、もっくん」

妙に晴々とした顔で、昌浩は一言そう言って笑った。時は真夜中、貴船の山中である。

月光に照らされた紅葉が、日中とは違う雰囲気をかもし出している。

「そうだなぁ。こう言うときにすらすらと句の一つでも詠めるといいんだが、ま、お前に期待する方が間違ってるか・・・」

「何おう!物の怪のもっくんの分際で。だったらもっくんは句の一つでも詠めるのか!?」

「物の怪と違うわ!それに、そんなもん詠めないに決まってるだろ」

威張るようなことではないが、なぜか得意そうに言いながら、物の怪は紅葉の絨毯をぽてぽてと歩いて行く。

傍から見ると、非常に愛らしい。まさかこの物の怪が憎まれ口を叩いて、昌浩を怒らせているなど想像もつかない。

「詠めないんだったら偉そうなこと言うな!」

「良いんだよ俺は。十二神将だから」

何なんだその理屈は、と突っ込みたくなるのをぐっと堪え、昌浩は物の怪に鋭い視線を向ける。

「そう言う時ばっか、ずるいぞもっくん。六合なら歌の一つや二つ、簡単に詠めそうなのに・・・・・・」

「ん?何か言ったか?」

ボソッと言った昌浩の言葉は物の怪には聞こえない。

何でもないと言って、当初の目的を果たすために、昌浩は奥社に向かって走り出した。

「おい昌浩!・・・・こけても知らないぞっ」

隠形した六合が同意したのを気配で捉えながら、昌浩は楽しそうに笑い声を上げた。




やけに、息をする音が聞こえる。心臓の音がうるさくて、うるさくてしょうがない。

足元に散らばる紅葉が血のように見えて、あの悪夢のような光景を呼び起こす。

紅葉は、足元に散らばる紅葉に足を取られながら、一歩一歩同胞の下に向かって歩いていた。

目的は一つ。傷を癒し憎きあいつに復讐を果たすため。送魂の神である彼女達を見下したあの行為は、

決して許せる物ではない。

・・・・・遠くから足音が聞こえてくる。数は三。

は今まで体を支えるのに使っていた剣を構え、ふら付く足を律して足音のする方を見据えた。

視界がぼやけてよく分からないが、大人一人、子供一人、小動物一匹と言った所だろう。

加えて大人と小動物は神に名を連ねる者らしい。

子供が声を上げる。少年特有の少し高くてよく通る声だ。

〈動くな、子供。そこの茶色いのと小動物もだ〉

子供は昌浩、茶色いのは六合、小動物はもっくんを指している。

それぞれ自分の言われように苦虫を噛み潰したような顔をしてその場で足を止める。

それを確認して、は精一杯声を張り上げた。

〈高於!見物していないで居るのだったら出て来い!!〉

すると急に濃厚な神気が漂って、妖艶な女神が姿を現した。

〈久しいな、。何用だ?〉

言って、高於の神は整ったその柳眉を心配そうにゆがめた。

〈如何した、その傷は。それに赤花は何処だ・・・・?〉

〈た、かお・・・・。・・・・・・い・・・つが・・・〉

伝えなければいけない、大切なことがある。しかしそれを言う前に、はがくんと力なくその場に崩れた。

それを難なく受け止めて、高於の神は、呆然としている昌浩一行を見て、こう言った。

〈お前達、ついて来い。これを見たからには少なからず関わる事になるだろうからな〉






降り積もる紅葉の中、絡み合った運命の輪。果たしてそれは、吉と出るか・・・・・凶と出るか。




                    



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後書き



今日は皆様。微妙にご無沙汰しております。

何だか本当に微妙で微妙で仕方がないのですが、如何でしょうか?

主人公を襲ったあいつとは一体!?と言うのを晴らそう、が当面の目的になるかと思われます。

それにしても・・・・昌浩ご一行様の出番が少ない!登場人物が少ない!主人公があんまり喋らない!

と、悪いこと尽くめでした・・・・。

加えて、夢幻の方でやっている次回予告を、やるかやらないか迷ったのですが、やりません。

読んであげようじゃないか、さあ書け。と言ってくださるやさしい方は、御茶屋にてお願いします。そうしたら頑張って書きます。

ではでは、今日はこの辺で。


よーし、次回は頑張るぞ!!



by桜  05,8,29